水道水質基準51項目の内容

水質検査

水道水は、水道法第4条に基づき、「水質基準に関する省令」で規定する水質基準に適合することが必要です。

現在、水質基準項目として51項目定められており、人の健康の保護の観点から設定された「人の健康に関する項目」(31 項目)と、生活利用上障害が生ずるおそれの有無の観点から設定された「水道水が有すべき性状に関する項目」(20 項目) からなります。

人の健康に関する項目(31項目)

  項目名 説明
1 一般細菌 水の一般的清浄度を示す指標です。これが著しく増加した場合には、し尿,下水,排水等による病原生物に汚染されている疑いがあります。一般には、塩素消毒によりほとんどの菌が死滅します。
2 大腸菌 水系感染症の主な病原菌は、人や動物の糞便に由来しており、大腸菌が検出された場合には、病原生物に汚染されている疑いがあります。一般には、塩素消毒によりほとんどの菌が死滅します。
3 カドミウム及びその化合物 蓄積性の有害物質で、長期間にわたり摂取すると、腎機能障害や骨障害をもたらします。イタイイタイ病の原因物質として知られています。自然界に広く分布しており、鉱山、工場排水混入の恐れがあります。
4 水銀及びその化合物 急性中毒では口内炎,下痢,腎障害、慢性中毒では貧血,白血球減少,手足の知覚損失の症状となります。水俣病は、有機水銀であるメチル水銀が原因で発生したことが知られています。自然水中ではほとんど検出されません。工場排水混入の恐れがあります。
5 セレン及びその化合物 金属セレンの毒性は低いですが、化合物には猛毒のものが多く存在します。粘膜に刺激を与え、胃腸障害,肺炎などの症状を起こします。鉱山や工場排水混入の恐れがあります。
6 鉛及びその化合物 神経系の障害や、貧血、頭痛、食欲不振などの中毒症状を起こすことが知られています。昔から水道管に使用され、溶けにくいといわれていましたが、最近は古い水道管からの溶出が問題となっています。
7 ヒ素及びその化合物 蓄積性があり、感覚異常や皮膚の角化、末梢性神経症などを起こします。ヒ素による健康被害は、西日本一帯で起きた森永ヒ素ミルク中毒事件が知られています。農薬,殺虫剤,医薬品,除草剤混入の恐れがあります。
8 六価クロム化合物 六価のクロムは毒性が強く、多量に摂取した場合は、嘔吐,下痢,尿毒症などの症状を起こします。鉱山、工場排水混入の恐れがあります。
9 亜硝酸態窒素 亜硝酸態窒素は、極めて低い濃度でも健康に影響があるため、メトヘモグロビン血症を発症させることがないように、定められた硝酸態窒素との合計量とは別に、亜硝酸態窒素は単独で基準値が設定されています。
10 シアン化物イオン及び塩化シアン 強い毒性があり、口から摂取すると粘膜から急速に吸収され、頭痛,吐き気,けいれん等を起こします。シアン化カリウムは青酸カリとして知られています。自然水中ではほとんど検出されません。工場排水混入の恐れがあります。
11 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素 窒素肥料、腐敗した動植物、生活排水などに含まれる窒素化合物が、水や土の中で変化して、この物質になります。高濃度に含まれると、幼児にメトヘモグロビン血症(チアノーゼ症)を起こすことがあります。基準値は、二つの合計値です。
12 フッ素及びその化合物 温泉地帯の地下水や、河川水に多く含まれることがあります。適量摂取は虫歯の予防効果があるといわれていますが、高濃度に含まれると斑状歯の原因となります。
13 ホウ素及びその化合物 中毒症状としては、下痢、嘔吐などを引き起こします。この化合物で馴染みのあるものにホウ酸があります。ホウ酸は刺激が少なく温和な消毒剤として使用されてきましたが、傷のある皮膚や粘膜などから速やかに吸収され、中毒症状を引き起こします。現在では、目の洗浄や消毒のみに使用されています。工場排水混入の恐れがあります。
14 四塩化炭素 化学合成原料、溶剤、金属の脱脂剤、塗料、ドライクリーニングなどに使用され、地下水を汚染する物質で、発がん性があることが知られています。
15 1,4-ジオキサン
16 シスー1,2-ジクロロエチレン及び
トランスー1,2-ジクロロエチレン
17 ジクロロメタン
18 テトラクロロエチレン
19 トリクロロエチレン
20 ベンゼン
21 塩素酸 原水中の一部の有機物と消毒剤の塩素が反応して生成される副生成物です。中でも、クロロホルム,ジブロモクロロメタン,ブロモジクロロメタン,ブロモホルムは、総トリハロメタンと呼ばれ、発がん性があることが知られています。
22 クロロ酢酸
23 クロロホルム
24 ジクロロ酢酸
25 ジブロモクロロメタン
26 臭素酸
27 総トリハロメタン
28 トリクロロ酢酸
29 ブロモジクロロメタン
30 ブロモホルム
31 ホルムアルデヒド

水道水が有すべき性状に関する項目(20項目)

  項目名 説明
32 亜鉛及びその化合物 水道管の亜鉛メッキ鋼管から溶け出すことがあります。高濃度に含まれると白く濁ります。他に工場排水混入の恐れがあります。
33 アルミニウム及びその化合物 浄水場での原水の処理過程で使用する、ポリ塩化アルミニウムという凝集剤に含まれます。高濃度に含まれると白く濁る原因となります。自然界には、土壌、水、動植物などに化合物の形で含まれます。
34 鉄及びその化合物 水道管の鉄管から溶け出すことがあります。高濃度に含まれると、異臭味や赤水となり、洗濯物を着色する原因となります。
35 銅及びその化合物 給水装置などに使用される銅管などから溶け出すことがあります。高濃度に含まれると、洗濯物や水道施設を着色する原因となります。
36 ナトリウム及びその化合物 過剰に摂取すると高血圧症等が懸念されます。基準値を超えると水の味に影響するようになります。自然界に広く分布しています。水道では、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒処理に使用されています。
37 マンガン及びその化合物 管壁に付着し、剥離して流出すると黒い水の原因となります。基準値を超えると、黒く濁る原因となります。主に地質に起因します。河川では、低層水の溶存酸素が少なくなると、地質から溶出してくることもあります。着色原因となることもあります。
38 塩化物イオン 基準値を超えると、塩味を感じる原因になります。また、金属を腐食させる原因となります。自然水中に含まれます。多くは地質に由来します。水道中の塩素イオンは、凝集剤、消毒剤使用によって増加します。
39 カルシウム、マグネシウム等(硬度) 硬度とは、カルシウムとマグネシウムの合計量で、硬度が高いと石鹸の泡立ちが悪くなり、また、胃腸を害して下痢を起こす場合があります。硬度が高いと、口に残るような味がし、低すぎると、淡白でコクのない味がします。
40 蒸発残留物 水をそのまま蒸発させたときに残る物質の総量で、その成分は主に、カルシウム、マグネシウム、ナトリウムなど無機塩類や、有機物です。残留物が多いと苦みや渋い味となり、適度に含まれるとまろやかな味になります。
41 陰イオン界面活性剤 生活排水や工場排水などの混入に由来し、高濃度に含まれると泡立ちの原因となります。
42 ジェオスミン 異臭味の原因物質で、藻類により作られ、カビ臭を発生させます。ダムの水など停滞水を水源とする水に発生しやすいとされます。
43 2-メチルイソボルネール
44 非イオン界面活性剤 生活排水や工場排水などの混入に由来し、高濃度に含まれると泡立ちの原因となります。自然環境中には存在せず、微生物が生分解することは困難で、石鹸、洗剤、可溶化剤などに使用されています。
45 フェノール類 この物質が含まれる原水を塩素処理すると、クロロフェノールが生成され、水に異臭味を与えるようになります。自然水中には含まれません。工場排水、防錆、防腐剤混入の恐れがあります。
46 有機物(全有機炭素(TOC)の量) 水中に存在する有機物の炭素を、有機炭素または全有機炭素(TOC)といい、水中の有機物濃度を推定する指標として用いられます。下水、し尿、汚水等を多く含む水の混入、汚染プランクトン類の繁殖の疑いがあります。
47 pH値 水の、酸性やアルカリ性の程度を表す指標で、7が中性です。7より小さいほど酸性が強く、7より大きいほどアルカリ性が強くなります。地下水は、二酸化炭素が多く含まれているので、微酸性のことが多く、配管やポンプが錆びやすいと考えられています。
48 水の味は、地質,化学薬品などの混入や、藻類等微生物の繁殖によるものの他、配管の腐食などに起因することがあります。
49 臭気 水の臭気は、藻類等や、放線菌等によるカビ臭物質、フェノールなどの有機化合物が原因です。水の塩素処理によるカルキ臭、水道管の内面塗装剤に由来することもあります。
50 色度 水の色の程度を数値で示すものです。色の原因は、主に、フミン質と呼ばれる 植物等が微生物により分解された有機高分子化合物や、鉄やマンガン等の金属類です。赤水は鉄、黒水はマンガン、青水は銅が原因と考えられます。
51 濁度 色の濁りの程度を数値で示します。濁りの原因は、主に、管内のサビや堆積物が流出した微粒子で、粘土性物質、鉄サビ、有機物質などです。給水栓水の濁りは、配・給水施設や、管の異常を示します。